Column/コラム

法律では「紙保存が認められる」とは されていないから

法律では「紙保存が認められる」とは されていないから

法律では「紙保存が認められる」とは されていないから

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第三百九十六回目。

テーマは、

「法律では「紙保存が認められる」とは
されていないから」

です。

前回も申しましたが、令和5年度改正では実質的に
紙保存が認められることとなっています。

しかし、正確なところは、相当の理由がある
場合に、電子取引のデータをプリントアウトした
上で一定の方法で保存をするとともに、データに
ついて税務署がダウンロードすることを認めれば、
検索要件などの要件は必要なく、電子保存が
できるとされています。

一見して何を言っているのかよくわからない
記述になっていますが、法令にはこのように
規定されています。

あくまでも、電子取引のデータは検索要件などの
一定の要件で保存する義務があるのであり、
所定の要件をクリアすればその保存要件を
緩和するとされているのです。

このクリアすべき要件の一つとして、紙保存が
挙げられているだけなのです。

このため、完全な紙保存が認められる
のではく、電子取引のデータ保存は今後も
義務付けられます。

このため、メールで添付された請求書について、
プリントアウトして保存したとしても、その
メールと添付ファイルを削除することはできません。

仮に削除すると、保存すべき電子取引のデータを
保存していない訳ですから、紙保存をしていた
としても、適正な資料の保存をしていないとして、
青色申告の取消対象になると考えられます。

それに止まらず、保存義務がある電子取引の
データについて改ざんなどがあれば、重加算税が
上乗せされるという取扱いの対象にもなり得ると
考えられます。

加えて、電子取引のデータのダウンロードにも
応じなければなりませんので、会社のパソコン
なども従来以上に税務調査でチェックされること
になりますから、実質的に紙保存が認められる
としても、以前に比して、税務上のリスクが
はるかに大きくなっていると考えられます。

令和3年度改正で義務化される前は、
紙保存をしていれば電子取引のデータ保存の
義務はない、とされていました。

電子取引のデータ保存に代えて紙保存も認める、
という改正をしたいのであれば、令和3年度
改正前の条文に戻せばいいだけです。しかし、
前回も申しました通り、財務省のメンツが
あるため、紙保存をすれば電子保存の要件を
甘くする、といった周りくどい内容にして、
こっそり不利益を納税者に押し付けているのです。

いずれにしても、プリントアウトして保存すれば
問題なし、とはなっていませんので注意が必要です。

結果として、税務調査前は紙の資料はもちろん、
ダウンロードが求められるため、電子保存して
いるデータの内容のチェックもしっかりと行う
必要があります。

それにとどまらず、電子データを保存している
パソコンをチェックされる場合、そのパソコンに
あるその他のデータについてもチェックされる
可能性が大きい訳ですから、今後は税務調査
前にパソコンを徹底的に確認することが必須の
対応になると思われます。