「相当の理由」と「やむを得ない事情」
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第三百九十五回目。
テーマは、
「「相当の理由」と「やむを得ない事情」」
です。
令和5年度改正においては、電子取引の
データ保存について、現状の令和5年
12月31日までの猶予措置を廃止した上で、
「相当の理由」があって所定の方法で紙保存を
するなど一定の要件を満たせば、検索要件や
真実性の要件などの一切の要件を必要と
することなく電子保存ができるという改正が
行われます。
令和3年度改正で創設された、電子取引の
データ保存の義務化は対応が困難である
ということで、令和4年度改正において適用が
猶予されていますが、さらに一歩進んで、
実質的に電子取引のデータをそのまま
保存した上で所定の方法による紙保存もすれば、
税法上は原則として問題ないとされます。
この改正に対しては好意的に受け取ることが
多く、「紙保存がOKになる」と声高に解説する
youtuberの税理士の方も多くいらっしゃいます。
しかし、改正は「相当の理由」があって
認められる取扱いとされていますので、
法律的には安易に紙保存が認められる
訳ではありません。
この点、会計システムベンダ―の方から、
「相当の理由って何ですか?」といった
問い合わせも受けましたが、システム対応が
難しいことや、金銭面で対応が難しいケースが
考えられているようです。
しかし、このような取扱いは法律的には正しく
ありません。この改正は、法律的には現状の
猶予措置よりも厳しい要件が要請されると
解釈されているからです。
現状の猶予措置は「やむを得ない事情」がある
場合に認められるとされていますが、法律用語に
おいて「相当の理由」は「やむを得ない事情」
よりもハードルが高い場合に使われる用語と
されているからです。
現状の猶予措置は、一例として電子保存の
システムを社内で揃えることが困難な場合などに
認められるとされていますので、それ以上に
困難な状況が存在しないと、この改正は適用
できないということになります。
となると、この改正は安易に使えないはず
ですが、実務上税務署が厳しい対応をする
確率は高くありません。
なぜなら、税務署にとっては経理資料が
電子保存されていようが紙保存されていようが、
事実確認ができればいい話だからです。
このため、法律に関係なく、電子保存されて
いなくても紙で保存しておけば、税務署は
基本問題なしと判断します。
こういう訳で、「やむを得ない事情」も
「相当の理由」がなくても、紙保存していれば
問題なし、というのが税務署の本音です。
このため、原則として紙保存で問題ないものの、
法律上のルールはそうはなっていないことを
押さえておくべきでしょう。