Column/コラム

「データのダウンロードに応じる」の意義

「データのダウンロードに応じる」の意義

「データのダウンロードに応じる」の意義

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第三百八十五回目。

テーマは、

「「データのダウンロードに応じる」の意義」

です。

令和3年度改正により、

会計帳簿をデータで保存するデータ保存
紙の領収書をスキャンしてデータで保存するスキャナ保存

については、システムの要件が大きく緩和されることになりました。

この改正は電子帳簿保存制度について事前の
承認を不要とした、といった手続き面に留まらず、
従来よりも簡易なシステムで電子帳簿保存が
認められる、といったシステム面の要件緩和も
行われています。

簡易なシステムであればその分IT費用が
削減できるはずですので、小規模の企業に
おいても広く、電子帳簿保存制度を
使ってほしいという国の意向が伺えます。

ただし、その簡易なシステムの要件として、
税務調査において「データのダウンロードに
応じる」という要件も付されていることに
注意が必要です。この要件は税務調査の際、
電子帳簿保存をしている会社について、

データをUSBにダウンロードさせて提供する義務

を意味します。

従来からよく質問を受けていますが、
国税調査官が税務調査で経理資料などの
パソコンのデータを要求することがあり、その
要求に応じる義務があるのか疑義があります。

データを調査官に持ち帰られると、それを
加工することで円滑な税務調査が可能に
なりますので、納税者としてはあまり
渡したくはありません。このため、
断れるなら断るべきです。

この点、権威ある書籍を読むと、国税調査官が
会社のパソコンにある電子データについて、
それをプリントアウトして提出するよう指導
することや、そのパソコンに手を触れずに、
会社の従業員に操作するよう指示してパソコンの
中を見ることは国税調査官の税務調査の権限の
範囲内で当然に認められる反面、現状の
税務調査でもよく見られる、パソコンの中にある
データをUSBで持ち出したり、勝手に会社の
パソコンを操作したりして、その中の
電子データを見たりすることは権限を逸脱
するため、納税者の承諾が必要と指摘されています。

この書籍の記述を踏まえれば、電子帳簿保存法の
適用を受けない場合には、国税調査官が
パソコンのデータをUSBで持って帰ろうとしても
承諾せずに断ることができるはずです。しかし、
改正で新たに認められた簡易なシステムを
採用して電子帳簿保存をしている場合、調査官に
電子データをUSBで持って帰られることを
承諾しなければならないということになります。

とりわけ、注意したいのは現状問題になっている
電子取引のデータ保存です。
電子取引のデータ保存とは、メールで請求書を
やり取りするようなケースで、この場合には
請求書をデータで所定の要件で保存しなければ
ならないとされています。

例外として、紙で保存することもできますが、その際は

請求書のデータをダウンロードして国税調査官に提供する

必要があるとされています。ほとんどの会社が
電子取引のデータ保存については、紙保存を
選択せざるを得ないため、となると今後の
税務調査ではデータをダウンロードさせなければ
ならないケースが通常になる可能性があります。

となると、国税調査官にスムーズに
税務調査されることになりますので、
税務調査リスクが大きくなります。

税制改正により電子帳簿保存制度が改正されて
使いやすくなる、といった話はよく耳にしますが、
使いやすさの反面、このような厳しくなる改正も
同時に行われていますので注意してください。