親族が大部分を占める会社の社員旅行の取扱い
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第三百八十二回目。
テーマは、
「親族が大部分を占める会社の社員旅行の取扱い」
です。
法人が役員や従業員のために支出する、
社宅家賃や懇親会費などの福利厚生費に
ついては、うまく使うことで役員等の生活費を
法人の経費にできますので、効果的な節税が
可能になります。
反面、その注意点としてよく言われるのが、
「親族が大部分を占める会社」の取扱いです。
このような会社は福利厚生費が認められない、
と指摘する専門家が多く存在します。
その背景には「福利厚生費は役員や従業員の
勤労意欲を高める費用であり、親族など
家族経営の会社では勤労意欲を高める必要もない
ことからそもそも支出する必要はなく、会社の
経費とするのは妥当ではない。」といった考えがあります。
実際のところ、国税の通達にはこの考え方に沿う
取扱いも設けられています。
それは、会社が契約者かつ生存保険金の
受取人で、役員や従業員が被保険者で
これらの者の遺族が死亡保険金の
受取人である養老保険の取扱いです。
この養老保険の保険料は、原則として
福利厚生費として法人の経費になると
されていますが、その例外として、
「親族などの同族関係者が大部分を占める会社」
の場合には、福利厚生費にならず、
被保険者である役員等の給与になると通達で
規定されています。
ところで、これに関連してよく質問を受けるもの
が社員旅行です。社員旅行については、
全社員を対象とし、かつ不参加者に旅行代金に
代わる金銭を渡すものではない、といった
一定の要件を満たす場合には、福利厚生費になる
とされています。
この社員旅行についても、先の養老保険と同様、
「親族が大部分を占めるような会社」では、
福利厚生費として認められないのではないか、
といった疑問があります。
この点、国税の通達には何も規定は
ありませんが、税務の専門誌の中には、
このような会社における社員旅行は、
家族旅行と何ら変わるものではないため、
福利厚生費にならないと明記されたものもあります。
実際のところ、国税から福利厚生費にならないと
指摘された実例もあります。
養老保険と社員旅行の違いをどう考えるか、
なかなか難しいですが、親族が大部分を占める
会社の社員旅行を認めないのであれば、
それを通達に書けばいいだけです。
加えて、家族旅行と変わらないという理屈が成立
するのであれば、家族経営の会社の役員給与に
ついても、お小遣いや生活費のシェアと一緒で
認められないことになるはずですが、
このような会社の役員給与について
問題になった事例は聞いたことがありません。
このため、税務調査において調査官が
問題視して修正申告書の提出を要請することは
あっても、更正処分等で強制的に課税するのは、
根拠が乏しくさすがに難しいのではないか、
と個人的には考えます。
実際のところ、先の実例においても、最終的には
問題なしで税務調査が終了したようです。
今後、通達などで認められないと明確化された
場合は別ですが、税務調査で問題視される
リスクを覚悟して、家族経営の会社も
社員旅行を経費として問題ないと考えます。