Column/コラム

重加算税には「故意」が不要の意味

重加算税には「故意」が不要の意味

重加算税には「故意」が不要の意味

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第三百七十回目。

テーマは、

「重加算税には「故意」が不要の意味」

です。

税務署の国税調査官は国税内部において、
不正取引に対するペナルティーである
重加算税について、
「故意は必要ない」と教えられます。

故意とは文字通り「不正を意図的に行う」という
意思を意味します。故意が必要ないため、
国税調査官は客観的に不正と評価できる行為が
あれば重加算税を課税できる、という理解を持っています。

しかし、過去の判例を見ると、重加算税を
課税するためには、不正を行う故意が必要
と明示されています。

このため、国税の指導は誤っていると
考えられますが、先の判例などを基に
国税調査官に反論した際、とある
最高裁判決を持ち出してきました。

そこでは、重加算税の要件として、
「過少申告の認識は不要」とされていますので、
不正の意図は必要ないという結論になる、
このような指導をその国税調査官は行ったのです。

再度、重加算税の要件を整理しますと、
重加算税は税額等に影響を及ぼす事実関係
についてそれを隠ぺいしたり(典型例は売上除外)、
仮装したり(典型例は架空外注費)した場合に
課税されるとされています。

隠ぺいにしても仮装にしても、
「故意」が必要なことは明白です。

このため、重加算税には故意が必要、
というのは常識的な判断です。しかし、
国税調査官が提示した、先の最高裁判決が
間違っているという訳ではありません。

繰り返しですが、一定の事実の隠ぺい仮装に
重加算税が課税されますので、
「脱税を目的にしない」隠ぺい仮装も、重加算税の
対象になります。典型例は予算消化です。

期日までに予算を消化しないと予算が
減らされることから、終わっていない工事を
終わったかのように仮装して、支店が本社に
報告することがあります。

この場合、脱税目的はないですが、事実の
隠ぺい仮装はあるため重加算税が課税されます。

同じ理屈で、国税局から交付される職員の
福利厚生用のチケットを職員に配布した
と仮装し、税務署の会計長が金券ショップで
お金に換えていたとされる裏金作りも、
脱税目的はありませんが重加算税の対象になります。

この脱税目的について、先の最高裁判決は
「過少申告の認識」と言っているのです。

このため、脱税目的は不要ですが、
隠ぺい仮装する故意は必要になります。
先の例でいえば、支店は工事を終わらせようと
仮装していますし、税務署は福利厚生のために
チケットを使ったことにしよう、とこれまた事実関係を仮装しています。

このため、先の最高裁判決を都合よく解釈する
国税調査官の指摘には、上記の通りに回答して
その不当性を認めさせることになりますが、
反面「脱税目的がない」という反論は何の
意味もないことを再度理解しなければなりません。

加えて、予算消化のため事実を仮装した部下が
悪い、といった理屈も当然通用しませんので、
国税が部下の不祥事があった際に述べる
「極めて遺憾」という言葉も、残念ながら重加算税の反論には使えません。