有価証券報告書と統合報告書の違い
金曜日を担当していますセブンセンスグルー
プ(SSG)公認会計士の髙橋です。
金曜担当の私からは、会計・財務、税務、監
査、内部統制関連の基礎・Tips等をお伝えし
ます。
126回目の今回は有価証券報告書と統合報告
書の違いについてお伝えします。
いきなりですが、結論をざっくり申し上げま
すと、
有価証券報告書は主に決算書等の財務情報を
記載したもの、
統合報告書は財務情報に加えて、非財務情報
も記載されたもの
になります。
有価証券報告書は馴染みがある方も多いと思
いますが、そもそも統合報告書がどのような
ものかご存知でしょうか。
統合報告書は、企業の売上や資産などの法律
や制度により開示が定められている財務情報
に加えて、
企業統治や社会的責任(CSR)、知的財産な
どの非財務情報をまとめたものになります。
欧米を中心とした海外の機関投資家が投資の
際に企業の社会的責任を重要視し始めたこと
を契機として、
海外の企業で財務情報と非財務情報の両者を
統合報告書で報告するようになりました。
日本においても1990年代からCSRの概念が拡
がり、企業価値の毀損リスクを避ける観点か
ら、
財務情報だけでなく非財務情報(環境、社会
に関する取り組み)をステークホルダーに開
示する企業が徐々に出てきました。
そして2013年、世界的な非営利団体、国際統
合報告評議会(IIRC)による「国際統合報告
フレームワーク」が公表され、
「統合的思考と統合報告書」についての概念
が提示されました。
世界的にESG投資が拡大した近年、投資家が
投資先を評価するために必要となる情報の重
要性が高まっており、統合報告書の重要性も
高まっています。
さて、具体的な有価証券報告書と統合報告書
の違いですが、大まかには以下のような点と
なります。
①開示義務の有無
②記載内容
個別にご説明すると・・・、
①開示義務の有無
有価証券報告書は投資家保護を目的として、
金融商品取引法で規定されている外部への開
示資料であるため、上場会社には開示義務が
あります。
一方で統合報告書には開示義務はないため、
上場会社でも作成している会社と作成してい
ない会社があります。
②記載内容
冒頭でもお伝えしましたが、有価証券報告書
は主に財務情報を記載したものであり、
統合報告書は財務情報に加えて、非財務情報
も記載されています。
一般的には、財務情報はハイライトとして要
約したものが記載され、非財務情報に多くの
ページが割かれていることが多いと言えます。
非財務情報は、企業の価値観から将来の目指
す姿、そこへ至るまでのビジネスモデルや戦
略について記載されるケースが多くなってい
ます。
このように、統合報告書は開示義務があるも
のではないため、企業が投資家等の利害関係
者に
自社を理解してもらい、投資してもらうため
アピール資料にもなります。
また、記載内容にも制約はないため、過去の
数値である有価証券報告書とは異なり、
企業の今後の目指す姿やそこへ至る戦略や社
会的責任への行動を提示し、
あらゆる利害関係者と良好な関係を維持する
為に役立たせるために有用な報告書であると
言えます。