領収書とクレジットカード明細と経費の要件
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第三百六十回目。
テーマは、
「領収書とクレジットカード明細と経費の要件」
です。
先日、とある元国税調査官の方の
動画を見ていたのですが、
クレジットカードの明細でも経費にできる、
と解説していて唖然としました。
国税庁のホームページにも書いてある
常識的な取扱いですが、
クレジットカードの明細では、
消費税において経費の控除ができない
とされています。
法人税や所得税とは異なり、消費税は
経費に関する資料の保存に厳しい要件を
設けていますので、カード会社から交付される
明細ではなく、クレジットカードを利用した
店が交付する領収書の原本を
保存する必要があるのです。
にもかかわらず、この元国税調査官が
このような解説をしたのは、法律の建前は
別にして、税務調査の実務上、
経費についてはその支払事実や支払内容を確認
できれば認めているからです。
このため、「領収書の保存がないと
経費として認められませんよ」などと
国税調査官はよく指導しますが、
国税調査官の本音は上記の通りで
半ば脅しですから、その言葉通りに
受け取る必要はありません。
なお、仮にこのような指導があれば、
国税庁の税制改正要望を使って反論しましょう。
平成28年度から現在に至るまで、
毎年国税庁は消費税と同様に、
「帳簿及び請求書等の保存」を法人税や
所得税の経費の要件とするように
要望しています。このため、消費税を除き、
現状「帳簿及び請求書等の保存」は
経費の要件ではないことが分かります。
とは言え、この税制改正要望を安直に解釈
して、「帳簿や請求書等の保存は不要である」と
判断してはいけません。確かに、現状経費になる
要件に帳簿や請求書の保存はありませんが、
帳簿を保存していなければ、税務上メリットが
大きい青色申告の承認を取り消された上、
所得の金額を国税が概算で計算する
推計課税が行われ、大きな不利益を被ることになります。
加えて、領収書や請求書の保存を
していなければ、支払先や支払内容など、
経費に該当することについて納税者がきちんと
国税に説明をしなければなりません。
この点、過去の判例では、経費についても
国税に立証責任があるというのが
大前提とされているものの、領収書の
保存がない経費については、納税者が
相応の立証責任を負うべきとされています。
こういう訳で、経費の計上に当たり、
領収書の保存はやはり慎重に行う必要があります。
いずれにせよ、
法律をろくに知らずかつ勉強もせず、
いい加減な税務調査実務が正しいと誤解
しているのが大多数の元国税調査官の
話を信用するのは危険極まりないのです。
デマ情報が氾濫している昨今、国税庁
としても、税に関するフェイクニュースを
垂れ流す、自称「税務調査の専門家」や
自称「節税コンサル」といった、税理士法違反の
疑いも大きい国税OBに対する監督を
強める必要があると考えます。