交通費の実費負担に係る 源泉徴収の取扱いが変わる?
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第三百五十六回目。
テーマは、
「交通費の実費負担に係る
源泉徴収の取扱いが変わる?」
です。
税理士やデザイナーなど、一定の
フリーランサーである個人に報酬を支払うような
場合、原則として源泉徴収が必要になります。
この場合の源泉所得税は報酬に一定割合を
乗じた金額とされていますが、このとき問題に
なるのは交通費などの実費部分です。
実費部分を支払先が負担する場合、
支払を受ける個人からすれば、交際費などの
実費は報酬とは別ですから、源泉徴収の対象に
なるのはこれらを除いた報酬の純額になる
と考えるはずです。
しかし、現行の取扱いは、その実費部分を
支払先が直接交通機関などに
支払った場合を除き、交通費等は
報酬に含まれて源泉所得税の計算対象になる
としています。
即ち、源泉「所得」税などと言いながら、自分の
「所得」とは言えない交通費の実費部分についても、
源泉徴収の対象になるとされているのです。
確定申告で源泉所得税は精算されるとはいえ、
源泉徴収されると、その分収入が減りますので、
支払いを受ける側としては源泉徴収されない方が
都合いいことは間違いありません。
しかし、支払者が交通機関や宿泊施設の
予約をとり、直接お金を払う、ということは
実務ではほとんどないでしょう。
むしろ、いったん報酬の支払いを受ける個人で
交通費などの実費を支払い、後日精算を
依頼することが通例です。
しかし、現行の取扱いでは交通費や宿泊費は
満額で支払わざるを得ないのに、源泉徴収後の
金額しかもらえませんので、源泉所得税分、
確定申告をするまでは自腹を切らなければ
ならないことになります。
一方で、会社で雇用されるサラリーマンなどの
従業員の給与については、通勤手当は所得税の
非課税になりますし、従業員が立て替えた経費
についても、勤務先で実費精算され原則として
源泉徴収の対象にはなりません。
この従業員の源泉徴収の取扱いと、上記の
個人のフリーランサーの取扱いは公平ではない、
といった指摘が従来からありました。
このことを踏まえ、とある税務雑誌の記事
によると、フリーランサーである個人が
立て替える交通費等の実費についても、
従業員の給与と同様に、源泉徴収の対象から
除く方向で国税庁が検討しているようです。
執筆時現在、国税庁から明確な見解は
出ていませんが、フリーランサーが増えている
現状を踏まえ、明確な要件緩和が期待されます。
なお、具体的な手続きについては、
上記の税務雑誌によると、立替払いをしたことが
検証できるよう、報酬の支払者の
名前(立替払いした交通費等の実際の負担者)や、
支払った日付などが記載された領収書を
発行してもらい、その領収書と引き換えに
精算をする必要があると解説されています。
となると、領収書の発行を受けなかった場合や、
「上様」名義の領収書では、この取扱いの対象には
ならないと想定されます。
自分の経費の場合、領収書の記載に国税は
厳しくありませんが、立替払いには厳しいため、
仮にこの取扱いが国税庁から認められた場合には
注意してください。