News Room《“International Taxation” News》
（2023.6.5)

海外資産にかかる税務は少しずつ身近な出来事になってきています
“GEPAS biz letter”は、seventh sense groupの大切なお客様に向け、海外税務に関するさまざまな情報を発信しております。

Topic『世界の税金 -5- 』– リアル・TDL –

東京湾には埋め立てで作った、小さい島（アイランド）がいくつかあります。
このアイランド近くの海岸通りは緑、黄色、赤などカラフルなコンテナを運ぶ大きなトラックが行きかっています。

海にも陸にも接しているこのアイランドの周りは、運河が11個あり、島や駅がある陸地に繋ぐために短い橋が30個以上かかっていて、
“都会の田舎”としてはなかなか異国情緒的な風情があります。

そんな都会で田舎の ”とうもろこし畑” の安い一室を筆者は借りて住んでいるのですが、初夏になると、やせ細ってボサボサの灰色の毛をなびかせて走り回る “都会の中のいなかのねずみ” をみかけます。

いわゆる、運河の土管にすむドブネズミたちなのです。
忙しそうに走る姿はかわいらしくもあり、この初夏の運河の地域は夜はまさにリアル・デイズニーランドになっています。（笑）
（※都会のねずみといなかのねずみのストーリーはイソップ童話より）

（写真筆者：2023/6/3 芝浦運河）

世界の三大運河（パナマ・スエズ・キール）

この中でも、
太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河は欧米の重要な航路になっています。
15世紀にコロンブスが新世界（北アメリカ）を発見したときこれが黄金の国ジパング（アジア）ではなかったとことを知り、
多くの探検家たちは、太平洋と大西洋が直接交わる場所を探すことに魅せられていきました。
そしてマゼランはじめ冒険課が次に探しあてたのは、北アメリカと南アメリカ大陸をつなぐ中央アメリカに存在する巾８０㎞の細長いパナマ地峡だったようです。

そして、この狭い水路に航路を作れば２つの海を繋げれられると考えたのですね。
このようにしてパナマ運河は、米国東海岸から西海岸まで遠回りして13000㎞だったところを82㎞で
横断できるという海上貿易において重要な航路として完成したのです。

(図：筆者作成）

ただし・・現在のパナマ運　河は淡水の上、常夏なのに人が泳ぐことができないほど下水が流れているそうで、
都会のネズミたちがたくさんいるんです^^

パナマ経済と日本とのつながり

このようにして出来上がったパナマ運河は、その地を経由しての中継貿易、国際金融センター、便宜置籍船制度(※)等が発展しています。
パナマの成長率は15.3％（2021年世銀）になっていて、現在では中米では唯一の高額所得の国になっています。
特に日本はパナマ運河の主要利用国であり、便宜置籍船登録（日本船舶の約6割がパナマ船籍）を通じ深い経済関係を有しています。
(※)便宜置籍船国とはオーナーが他国の人で、外国船からの売上は無税。

★ただしパナマでの節税が将来に禍根を残した例
参考：日本におけるパナマ（タックスヘイブン）特定外国子会社の損益通算
（国税庁HP:タックス・ヘイブン税制と実質所得者課税の関係－便宜置籍船会社の留保金課税と損益通算－（要約） (nta.go.jp)）

パナマの課税制度

パナマはタックスヘイブン地のひとつですが、税金がまったく無いわけではなく、所得税は世界的に獲得された所得に対して課税されます。
ただし、パナマ国内で獲得された所得には優遇措置があり、税率も比較的低く（最高25％）設定されています。
法人税は、基本的に外国で獲得された収益は税金がかからず、課税されても税率は25%程度。
パナマの税制は、特定の条件下で法人や個人が税務上のメリットを享受できるように設計されているため、多国籍企業や国際ビジネスがパナマに進出する動機となっています。

パナマ文書により国際課税強化へ

OECDが発信した租税回避対策は今では日本を含む先進国が加盟し推進していますが、“パナマ文書” も大きく影響を与えたのです。

タックスヘイブン地域とは

タックスヘイブン地域とはどこでしょうか。。
税務的にパナマを含む、カリブ海の英領のバージン諸島、ケイマン諸島など、一般的に実行税率が20％以下の低課税地域のことを指してます。

これらは、富裕層への税優遇制度が手厚い上、個人情報の保護などを理由に、日本や英国、米国やドイツなどの
税務当局の求める納税情報の提供を拒否し干渉が難しい地域でのため、これらの地域は富裕層の資金が集まりやすい地となっているのです。

BEPSの強化

～富める企業や国とそうでない企業を是正するために～
2012年にOECDは「税源浸食と利益移転=BEPS：Base Erosion and Profit Shifting）」
のプロジェクトを制定しています。
これは近年のグローバルなビジネスモデルの構造変化により生じた各国税制や
国際課税ルールとの間のずれを利用し課税逃れを行っている問題対策のためで、日本を含む20カ国・地域（Ｇ20）が参加しています。
（BEPSプロジェクト｜国税庁 (nta.go.jp)）

特には、近年では電子商取引が一般化し取引が国境を超え、企業のグローバル化が加速されるようになったにもかかわらず、
各国の税制はそれをカバーできず、企業はいろんな取引を考え出して、利益をタックスヘイブン地などの低税率国に移転するようになりました。
当時たとえば、米国企業スターバックスの場合は、英国に進出して以来14年間で約3840億円の売上を計上していますが、
支払った法人税は約11億円程度で、

その上2008年以降は全く英国の法人税を支払っていませんでした。
国際課税のすきまを縫った合法的な節税でした。

★これでは、大企業と、中小企業との間に税負担の不公平が生じています！

『パナマ文書』で21万社以上の情報流出

そんな時、パナマは世界課税の潮流に大きな影響を与えるきっかけにもなり、日本だけでなく世界的にも大ニュースになったのです。

問題は2016年4月に公表された『パナマ文書』でした。
この文書は現地法律事務所『モサック・フォンセカ』によって作成された機密文章でしたが、ハッキングされたのです。

文書には約21万件件以上に及ぶ、タックスヘイブン地域で、
ペーパーカンパニーを設立した企業名や富裕層の個人名の租税回避情報のデータ、
未申告資産の総額が2200兆円以上の巨額が載っていました（汗）

＝租税回避の手法＝
BEPSの手口は、実際には存在しない架空の会社を作り、そこにテロや犯罪行為などで得た資金や賄賂を口座から口座へと転々とさせて、
資金のでどころや受益者をわからなくし裏金を作ります。
これによってマネーロンダリングを可能にする方法です。

＝パナマ文章の情報＝
公表された人々は例えば各首相（アサド：シリア、プーチン：ロシア、キャメロン：イギリス、ラザク：マレーシア、習近平：中国）、ジャッキーチェンなど21万件以上です。
日本企業も、法人20社前後、個人200人以上だそうです。（当該めるまがには日本の固有名称は記載しませんでした）

世界でこんなに多くの企業や富裕層が税金の支払いを抑えるためにタックスヘイブンを利用していたんですね（汗）
それが世界のスキャンダルになったのです。

国際課税への影響

どうしてパナマ文書がこれほど報道され、重要視されたのでしょうか。
その一因は、記載の世界的 ”BEPSプロジェクト”の動きの中で、タイミング良くパナマ文書が出てきてしまったことだったのです。

BEPSプロジェクトは、「百年に一度の画期的刷新」ともいわれ、企業に求めるのは、基本的には各国税務当局への情報開示です。
特に次のように欧州中心に税務情報開示の透明化が強化されたのです。

・欧州委員会ではパナマ文書問題発覚後、欧州連合（ＥＵ）域内で活動する多国籍企業に国別利益や納税額の報告や公開義務を定めるＥＵ指令案を提案し国内法制の整備を進めている。
・英国は、一定規模以上の事業を行う企業に、税務戦略のネット上での公開を義務付ける。
・欧州委は米アップルに対するアイルランドの税優遇を違法とするなど税制への関与を強めており、ＥＵで事業展開する日本企業にも影響している。
・英国には「タックス・ジャスティス・ネットワーク」など税に関する情報を発信する有力な市民団体があり、企業の納税姿勢に注がれる目は厳しさを増している。

リアル・TDLで生きる

運河のねずみから、以前雑誌で、生物学者が言っていたことを筆者は思い出しました。
この言葉は、案外的を得ているのかもしれないなぁ。。と。
“人類は小さな地球で一生懸命助け合って生きているねずみのような生物だと”

イソップ童話では、都会のねずみも田舎のねずみも、それぞれの立場を交換してみたけれど、
やっぱり自分が一番幸せだったんだと気づきます。

運河ひとつにしても、そこは安全や幸せにもなり得、逆になり得なかったり。。
それは結局それぞれの考え方に任されているのだろうと気が付かされます。

・・すべての成功や繁栄も、
今生きているリアル・デイズニーランドで一生懸命全力でやっていく！
それが遠いようで、一番の近道かもしれませんね^^

（写真：【ディズニー100周年記念：世界のディズニー パーク＆リゾート】
ナショナル ジオグラフィックより）

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