財産贈与を受けた者の相続分について知りたい
40代・女性のご質問
父が先月他界しました(母は3年前に死亡)。
兄弟は、私と兄と姉の3人です。
兄は生前父から独立資金(会社設立)として多額のお金を出してもらっていました
(相続時点での評価額は2,000万円)。
父の遺産が1億円の場合、3人で遺産を分割する際にどのような配分となるのでしょうか。
回答
特別受益は相続財産に含める
共同相続人の中のある者が、被相続人から婚姻、学業、生計の資本等として
生前贈与を受けた財産を「特別受益」といいます。
特別受益は、相続財産とみなされ、遺産分割協議の際に考慮します。
特別受益の評価
相続人が被相続人から贈与された金銭を特別受益として相続財産に加える場合には、
贈与時の金額を相続開始時の貨幣価値に換算した価格をもって評価します(最高裁判例)。
質問のケースの場合
亡父が兄(長男)へ会社設立資金として出した金額2,000万円は特別受益に当たります。
亡父の遺産分割時に受益分を加算したものを相続財産とみなして協議することになります。
亡父の遺産は1億円、長男への生前贈与は2,000万円ですから、
これを足して1億2,000万円が計算上の相続財産となります。
したがって、この額を各自の相続分割合に按分して相続分を算定します。
兄12,000万円×1/3=4,000万円4.000万円−2,000万円(亡父からの生前贈与分)
=2,000万円姉12,000万円×1/3=4,000万円あなた12,000万円×1/3=4,000万円
以上のとおり、兄は2,000万円、姉とあなたは4,000万円の配分となります。
ワンポイント
生前贈与や遺贈は相続分の前渡しとの考えから、相続財産とみなされ遺産分割の際に考慮されます。
ただし、被相続人が遺言証書で
「○○に対する贈与(又は遺贈)は遺産分割にあたって考慮しないこと」
と指定しているときは、遺留分の規定に反しない限り有効となります。
被相続人がこのような考えをもっている場合は、遺言書を作成しておくことをお勧めします。