Column/コラム

資料の状態によるスキャンの難しさ 『ペーパーレスの壁』第1回
2025.04.08
ペーパーレス

資料の状態によるスキャンの難しさ 『ペーパーレスの壁』第1回

資料の状態によるスキャンの難しさ 『ペーパーレスの壁』第1回

会計事務所にとって、業務の効率化は常に大きなテーマ。その中でも「ペーパーレス化」は、多くの事務所が取り組みたいと考えている施策のひとつです。
セブンセンスでは、回収したほぼすべての資料をスキャンして電子化することで、完全なペーパーレス業務を実現しています。この方法をおすすめしてはいるものの、「うちの事務所ではすべての資料をスキャンするなんて無理です…」という声も多く寄せられます。

そこで今回の連載では、一度立ち止まり、「なぜそれが難しいのか?」を丁寧に見つめ直しながら、セブンセンスが実際に行っている工夫や対応をお伝えしていきます。

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…これらのワードに「おっ‼👀」となった方、必ず最後までご覧ください!!!

紙の資料が残る現実と、その“状態”

セブンセンスでも、データでの資料回収を推進してはいますが、長くお付き合いのある顧問先を中心に、今もなお「紙での資料回収」が多く残っているのが実情です。そして、そうした紙資料の“状態”は千差万別。スキャン業務の担当者にとっては、ひと手間どころか、何工程も必要になってしまいます。

実際に、ランダムに20件ほどの資料を抜き出して確認したところ、約半数で以下のような「スキャンが困難な状態」を確認できました。

実際に見られた“スキャン泣かせ”な資料たち

  • ホチキスで留められたレシートや請求書
  • 整理されていないレシート類(袋に無造作に入れられたもの、クリップで束になったもの)
  • 不要資料が混在(会計処理に不要なものも多数)
  • 種類別に仕分けされていない(請求書や通帳コピーなどが混ざっている)
  • ノートや台紙、スクラップブックに貼り付けられている
  • 封筒に入ったまま(未開封含む)
  • 圧着ハガキが未開封のまま
  • 片面・両面コピーが混在
  • 通帳が複数冊分、1枚にコピーされている
未開封の圧着はがきが含まれていることはかなり多い
台紙に貼り付けられたレシート等
島口 雅
島口 雅

📝POINT📝
こうした資料の扱いには、スキャン以前の「下準備」だけで相当な労力がかかります(;´・ω・)

顧問先ごとの事情も、ハードルに

スキャン担当者へのヒアリングからは、特定の関与先の事情による困難さも明らかになってきました。

顧問先の個別事情

  • グループ会社の資料が混ざっている
     ➡ 事業者ごとに分類が必要
  • 過去月の資料も一緒に保管されているファイル
     ➡ 必要な月のみを選別してスキャン
  • 資料は預かった順で返却してほしいと言われる
     ➡ 並び替えにも気を使う
月次進捗を管理するシステムに書かれた注意書き
島口 雅
島口 雅

📝POINT📝
こうした“顧問先ルール”に柔軟に対応しながら、いかにスムーズにスキャンを進めるか。現場では、日々工夫を重ねて対応しています(‘◇’)ゞ

全体の2~3割が“スキャンしづらい”

もちろん、すべての顧問先がスキャン困難というわけではありませんが、担当者の実感では全体の2~3割ほどの関与先で、「これは手間がかかるな…」と感じることがあるようです。

多くの会計事務所では、こうした資料状態の多さに「すべてをスキャンするのは非現実的」と感じてしまうのかもしれません。

それでも、私たちは“全部スキャン”する

こうした実情がある中でも、セブンセンスではすべての資料をスキャンする体制を整え、運用を続けています。もちろん、現場では多くの工夫や工数のかけ方がありますが、それでも一貫してペーパーレス化を進めるのは、それに見合う大きなメリットがあるからです。

「手間をかけてまでスキャンする意味があるのか?」

この問いに対しては、次回以降の連載で、スキャンのメリットを具体的にご紹介していきたいと思います。

そして現在の体制では、スキャン困難な資料は多数存在するものの、それをカバーできるだけの仕組みが整っていることも事実です。

例えば、電子資料の保管に関しては、システムを含む徹底したルールで運用されており、過去にお預かりした資料がどこに入っているかが、顧問先担当者でなくてもすぐにわかる状態になっています。このため、不要資料が入っていたり、一見しただけでは判断に迷う資料も、前月資料を参照することで、ほとんどが特定・分類可能となっています。

また、顧問先ごとの必要資料についてはシステム上ですべてリスト化されていますし、顧問先ごとの特殊な事情があればその情報を共有できるようにもなっています。

セブンセンスのスキャン工程の秘密はこちらの記事を参照

このようにして、スキャン業務を完全に独立した業務工程に切り出すことで、完全ペーパーレス化を実現できています。一口に「資料をスキャンする」といっても、このような様々な工夫とルールの徹底、組織作りの積み重ねによって実現できているわけです。

これらすべてを行うのは簡単なことではありませんし、私たちも現在の仕組みにたどり着くまでにはかなりの年月をかけて試行錯誤をしています。難しいからと最初からあきらめる必要はなく、ぜひ小さなステップからコツコツとチャレンジを続けていただければと思います。