東先生の人事労務相談室「退職・解雇のトラブルを防ぐための対応策」

社会保険労務士の東先生が、これまでの豊富な経験をもとに、退職や解雇に関する疑問やトラブルについてわかりやすく解説します。退職の手続きや解雇時の注意点など、企業と従業員双方にとって重要なポイントが満載!これを読めば、退職・解雇に関する適切な対応策がわかり、職場の円滑な運営につながるはず。今回はどのような質問に答えてくれるのでしょうか?教えて東先生!

セブンセンス社会保険労務士法人
特定社会保険労務士 代表社員

「最近、退職や解雇に関するトラブルが増えていると聞きます。
それらを防ぐために企業としてどのような対応をすべきか教えてください。」
退職や解雇に関するトラブルは、主にコミュニケーション不足や
手続きの不備から生じることが多いです!

退職日によるトラブルが多い!

退職時の認識のズレを防ぐため、企業は適切な対応を心がけることが重要です。
よくあるのが退職日をめぐるトラブルです。
例えば、従業員が希望する退職日の3ヶ月前に退職届を提出したにもかかわらず、会社側が「すぐに辞めてもらって構わない」と発言した場合、会社の都合で一方的に退職日の変更したとされ解雇と見なされる可能性があります。この場合、解雇予告手当を請求されるケースや、労働基準監督署から指導を受ける可能性もあります。まずは、退職届を正式に受け取り、書面で退職日を明確にすることが必要です。口頭のみでは誤解が生じるため、書面で確認し、双方の合意を明確にしましょう。
次に、有給休暇の取得計画を本人と調整することも大切です。退職時に未消化の有給休暇を消化したいと申し出があった場合、会社は基本的にこれを拒否することはできないため、業務への影響を考慮しながら調整します。また、引継ぎのスケジュールを事前に確認することで、業務の混乱を防げます。後任者への引継ぎ期間を確保し、必要な情報を整理しましょう。
これらの対応をしっかりと行うことで、退職後のトラブルを未然に防ぎ、企業と従業員の双方が納得できる円満な退職につなげることができます。
育児・介護休業法について
退職理由として、多くあげられる育児や介護ですが「育児・介護休業法」によって、企業側も積極的に仕事と育児・介護が両立できるよう支援を行うことが定められています。退職時にこのような支援がなされていないと、行政による指導されるケースがあります。
2025年4月に施行される[育児・介護休業法]の改正では、
・子の看護休暇、介護休暇の拡充
・残業免除の対象拡大、
・育児・介護のためのテレワーク導入の努力義務、
・育児休業取得状況の公表義務拡大、
・介護離職防止のための雇用環境整備と個別周知・意向確認の義務化
2025年10月1日に改正される「育児・介護休業法」では、
・柔軟な働き方を実現するための措置等
・仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
が、事業主の義務として新たに定められます。
その他にも育児や介護と仕事の両立を支援する取り組みが義務として定められています。厚生労働省のホームページには、「育児・介護休業法」に関する資料や動画が掲載されていますので、これらを活用しながら正しく理解をして必要な対策を急ぎましょう。
(参考: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html )
退職時にもアンケートを活用しましょう!
以前のコラムで採用活動時に事前アンケート(誓約書)を実施することをお勧めしましたが、退職時にもアンケートを活用するケースが増えています。一部の大企業では、以下のようなアンケートに回答することを退職金の満額支給の条件としているケースもあります。
「秘密保持条項」に関するアンケート
企業が退職する社員に対して「秘密保持条項」に関するアンケートを実施することは、情報漏えいのリスクを防ぐ上で重要です。まず、退職者が業務上知り得た機密情報を正しく理解し、それを外部に漏らさない意識を持っているかを確認できます。
「競業避止」に関するアンケート
企業が退職する社員に対して「競業避止」に関するアンケートを実施することは、企業の利益を守るために重要です。退職者が同業他社に転職したり、独立して競合ビジネスを始めたりする場合、企業のノウハウや顧客情報が流出するリスクがあります。アンケートを行うことで、退職者が競業避止義務の内容を理解しているかを確認し、リスクを事前に把握できます。
円満退職がもたらすメリット
近年は「退職した従業員を再雇用する」企業が増えています。退職した従業員を再雇用することで、採用コストを抑えつつ、即戦力として活躍してもらえるメリットがあるからです。また、企業への愛着があり、再雇用後の定着率が高い傾向があります。過去に円満に退職した従業員は、企業の良さを理解しており、長く働く意欲を持ちやすいため、安定した人材確保にもつながります。
これは、退職時のトラブルを防ぎ、従業員との良好な関係を維持することが、将来的な人材確保や企業の持続的な成長につながることを示しているといえるでしょう。
まとめ
退職や解雇は、企業と従業員双方にとって重要な局面です。トラブルを防ぐためには、退職の申し出を適切に受け入れ、書面での確認や有給休暇の調整を行うことが不可欠です。また、解雇を行う際には法的手続きを遵守し、リスクを最小限に抑えることが求められます。さらに、円満退職の環境を整えることで、将来的な再雇用の可能性も広がります。退職時の対応を見直し、より良い職場環境を築いていきましょう!
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