Column/コラム

同族法人への貸付金ゼロ円評価は極めて困難

同族法人への貸付金ゼロ円評価は極めて困難

同族法人への貸付金ゼロ円評価は極めて困難

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。


私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく解説していきます。


それでは、第四百八十一回目。
テーマは、「同族法人への貸付金ゼロ円評価は極めて困難」です。


相続税で最も大きな問題になる財産の一つに、被相続人の同族法人に対する、被相続人の貸付金があります。


多くの中小企業は資金繰りが厳しいため、オーナーである被相続人がポケットマネーを自己が経営する同族法人に貸し付ける、といったことが実務ではよく行われます。


このような貸付金も金銭債権である以上、相続財産になります。しかし、資金繰りが悪いからこそ貸しているお金なので、自社から回収できる見込みは高くはありません。


回収できないのに額面で相続財産とされてはたまったものではありませんから、同族法人に対する貸付金について、回収見込みがない、としてゼロ円で評価できないか、よく相談を受けます。


相続税の財産評価の通達では、「回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる」金銭債権についてはゼロ円で評価できるとされています。


しかし、この取扱いが認められるかと言えばほとんど認められず、私の知る限り認められた事例は二つくらいしかありません。


一つは、税金の滞納をしている個人債務者に関するもので、返済に使えそうな預金や不動産もないとされたケースです。


もう一つは、収入はあるものの、最低生活費を保証するとすれば返済までに相当の時間がかかる個人債務者に対するものです。


いずれにしても、個人債務者に対するものです。個人の場合、最低生活費などについて考慮する必要があります。


しかし、法人は生活費などありませんから、同族法人に対する貸付金について、これらの事例の事実関係を参照してゼロ円評価ができると主張したしても、認められる確率は低いでしょう。


それどころか、法人が債務者の場合は、個人債務者に比して、もっと回収見込みがないことのハードルが高いと思われます。


なぜなら、個人の場合、決算書を作る必要は原則ありませんが、法人の場合には、決算書として損益計算書と貸借対照表を毎年作成しなければならないからです。


とりわけ、法人の収益力を表す損益計算書が厄介です。黒字倒産という言葉が示す通り、損益計算書で算定される利益は長期的な収益力を示します。


このため、短期的な資金繰りや財政状況が悪くても、損益計算書の状況はいい、といった会社が多数存在します。


このような会社であれば、資金繰りが悪くても一時的であり、長期的には返済も可能と見込まれるため、被相続人の貸付金についても回収見込みはあると判断される可能性があります。


こういう訳で、同族法人に対する貸付金をゼロ円評価するというのは非常に難しいです。


このため、被相続人の生前に、債務免除を行うなどして、回収が見込まれない同族法人に対する貸付金は確実に消しておくべきでしょう。


ただし、同族法人に債務免除をすると同族法人において法人税の問題が生じたり、一定の場合には他の株主に対する贈与税の問題も生じたりする場合があります。


このようなハードルも残る訳ですから、同族法人に対する貸付金については、一日も早く対策を行う必要があります。


追伸、

わたくし松嶋洋の詳しいプロフィールは以下のサイトからどうぞ!!

↓↓↓

Facebook:https://www.facebook.com/motokokuzei

Twitter:@yo_mazs