Column/コラム

東先生の人事労務相談室「ハラスメント潜んでいませんか?」
2024.12.05
人事労務

東先生の人事労務相談室「ハラスメント潜んでいませんか?」

東先生の人事労務相談室「ハラスメント潜んでいませんか?」

社会保険労務士の東先生が、これまでの豊富な経験をもとに、人事労務に関するあらゆる質問にわかりやすくお答えします。ハラスメントや労務管理の課題など、職場環境の改善に直結するトピックスが満載です。これを読めば、よりよい職場環境づくりに向けて、すぐに役立つ知識を得ることができるはず!今回はどのような質問に答えてくれるのでしょうか?教えて東先生!

質問者
質問者

「様々なハラスメントの話題を耳にします。
特に多い事例とその対策を教えてください!」

何気ない言動が思わぬハラスメントに繋がってしまう…
そのようなケースが増加しています。
いくつか、事例と対策をご紹介していきますね!

東先生
東先生

当事者間の問題だけじゃない!『環境型ハラスメント』を知ろう!

近年、特に問題視されているハラスメントは『環境型ハラスメント』というものです。
これは、当事者だけでなく、その周囲にいる従業員にも悪影響を及ぼすハラスメントです。
たとえば、職場で社長が特定の従業員に対して、頻繁に「肩を揉む」といった事案があるとしましょう。触れられた本人は「上司の気遣い」として受け入れようとしていても、周囲の従業員がその様子を見て「次は自分が同じ目に遭うかもしれない」と感じたら、それは立派な「環境型ハラスメント」の一種です。

環境型ハラスメントは、当事者同士の問題にとどまらず、職場の空気を悪化させ、従業員の退職やモチベーションの低下を引き起こすことが大きな特徴です。このような事態を防ぐためには、ハラスメントが及ぼす影響に関して、社員全員が共通認識を持つことが、対策の第一歩になるでしょう。

「イマドキの若者は!!」は禁句!?「エイジハラスメント」の正体。

『エイジハラスメント』も現代における深刻なハラスメントの一つです。
年齢に基づく価値観の押し付けが、差別や関係性の悪化に繋がってしまうハラスメントです。具体的には、「自分たちの若い頃はこれが普通だった」といった上司の価値観が原因で、若い世代の従業員が居心地の悪さを感じさせてしまうケースが多く挙げられます。例えば、若い社員に対して「今どきの若者は根性がない」と発言すること。また、社員に直接言わないとしても、そのような話題を社内で行うことは知らず知らずのうちにハラスメントとなり、組織の生産性を低下させてしまうことに繋がりかねません。

時代が大きく変化する中で、価値観の違いを尊重することはとても重要です。企業は社員研修などを通じて、世代間のコミュニケーションを円滑にするための知識を共有し、互いを理解することが必要でしょう。

ハラスメントを恐れた結果、大問題に発展?!

上司が従業員に対して繰り返し厳しい言葉で注意を行ったり、他の従業員の前で不適切な指摘をする行動は、昔からパワハラの代表例として認知されているかと思います。しかしその一方で、ハラスメントを回避しようと過敏になるあまり、必要な指導を十分に行わず、結果として解雇となった場合に問題が生するケースも少なくありません。
このように、職場での指導とハラスメントの境界線を見極めることは、現代の企業にとって大きな課題です。

解雇が正当と認められるためには、段階を踏んだ適切な指導と証拠の記録が欠かせません。例えば、従業員の業務パフォーマンスが低下している場合、具体的な改善策を示し、その結果を始末書や面談記録に残すことで、指導が適切に行われたことを明確にする必要があります。これにより、解雇が不当とみなされるリスクを回避し、同時にハラスメントと受け取られる可能性を減らすことができます。

さらに、解雇の手続きが適切でない場合、それが職場全体に悪影響を及ぼすことがあります。解雇に至るまでの経緯が不明瞭だったり、対応に一貫性が欠けていたりすると、他の従業員に不安や不信感が広がり職場の雰囲気が悪化する可能性があり、生産性が低下するといわれています。
まずは、解雇まで発展しないよう未然に問題行動の指導や教育を行い、ハラスメントを怖がらず、適切な指導やコミュニケーションを十分に行いましょう。

企業が取るべきハラスメント対策

ご紹介したようなハラスメントを防ぐためには、企業全体での取り組みが不可欠です。
まず、ハラスメントに関する社内ルールを明確化し、全従業員に周知することが基本です。また、社員が気軽に相談できる窓口を設けるなどして、トラブルを早期に発見し解決することも欠かせません。特に、外部の専門家や社労士との連携を強化することで、ハラスメント問題が起きた際に迅速な対応が可能になるでしょう。

こうした対策を講じることで、企業はより健全で働きやすい職場環境を築くことができ、従業員の生産性向上や離職率の低下につながるのです。また、何よりも「日々の気づきによる配慮と相互理解」がトラブルを防ぐ最善策でしょう。