Column/コラム

見落としがちな保険料贈与スキームで有効な反論

見落としがちな保険料贈与スキームで有効な反論

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第四百五十二回目。

テーマは、

「見落としがちな保険料贈与スキームで有効な反論」

です。

相続税の節税に繋がる生前贈与に対し、相続税の課
税強化の方向性が打ち出されています。

生前贈与を活用した有効な節税スキームとして、保
険料贈与スキームがあります。

これは、相続人である子を契約者兼受取人として生
命保険に加入させ、その保険料を親が非課税となる
110万円の範囲で子に生前贈与させて子に支払わ
せる、というものです。

このスキームが有効なのは、生前贈与によって親の
財産を減らすことができますので相続税の節税にな
るだけでなく、子が受け取る保険金に対する所得税
は一時所得で優遇されるため、相続人にもメリット
があるからです。

このスキームは広く行われていますが、毎年ほぼ定
額の保険料を贈与しますので、(1)年金の贈与とさ
れるリスクや、(2)生前贈与が成立していないと判
断されるリスクがあると言われます。

(1)については、例えば毎年所定の時期に110
万円親が子に贈与するとした場合、親と子の間で毎
年110万円もらえる年金を贈与したと判断される
リスクを意味します。

年金は「定期金に関する権利」という財産にあたり、
年金の元本相当額を基礎とした評価がなされ贈与税
が課税されます。

このため、仮にこれに当たるとされれば、110万
円の非課税枠を超え多額の贈与税が課税されること
になります。

対策として、所定の時期に定額で給付されるのが年
金ですので、毎年贈与の時期や金額を変えるべきと
言われます。

次に、(2)の生前贈与が成立していないとされるケ
ースですが、これはいわゆる名義財産の話です。

生前贈与が成立しないのであれば、保険料は子では
なく親が直接負担していることになるため、契約者
である子は単なる名義人で、本来は親の生命保険で
あり親の相続税の対象になる、といった認定ができ
ます。

子への生前贈与がきちんと成立していれば問題あり
ませんから、その証拠を示すために親と子で贈与契
約書を作ったり、110万円までなら贈与税の課税
はありませんが、敢えて税額が0円で贈与税の申告
をしたりする対策が必要と言われます。

ただし、これらの処理を行うと手間がかかりますの
で、これらの対策を取っていない方も多いと思いま
す。

このため、税務当局と揉めることになる訳ですが、
上記のほかに効果的な対応策として、所得税の生命
保険料控除の適用があります。

所得税の生命保険料控除は、生命保険の契約者では
なく、実際に保険料を支払った者が適用を受けるこ
ととされています。

このため、子が契約者の生命保険の保険料を親が支
払った場合、親が生命保険料控除を受けることがで
きます。

言い換えれば、生命保険料控除は生命保険料控除の
支払者が誰かを示す有効な証拠になり得る訳です。

生命保険料控除は契約者である子が行っていること
が通例ですから、生命保険料控除を子が行っている
ことを主張しましょう。

理論上は、保険料は子が実質的にも支払っているこ
とになるため、親は保険料負担者ではないことから、
親の名義財産ではないと反論できるはずです。