個別延長では救済されないことがある
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第四百三十一回目。
テーマは、
「個別延長では救済されないことがある」
です。
前回、e-Taxの接続障害による令和3年度の
確定申告期限の延長について解説しました。
復習すると、本来は国税庁長官が職権で行うべき
対象者指定をすべきなのに、納税者一人ひとりが
個別に申請する個別指定の対象にしているのです。
一見すると、同じ期限延長で内容は大きく
変わらないように思われるかもしれませんが、
後者は申請が必要になるため
、申請を忘れてしまえば適用がありません。
当時、この申請は申告書の余白に書けば足りると
されていましたが、書き忘れのないように処理する必要があり、
書かなければ延長されませんでした。
次に、実務上問題になるのは、
青色申告特別控除の増額の処理です。
青色申告特別控除により、青色申告者が貸借対照表を添付して
期限内申告をすると、最大55万円の控除ができます。
さらに、この期限内申告をe-Taxで行えば、
さらに10万円控除額が増額され、
65万円控除ができることになっています。
e-Taxによる期限内申告ができなかった当時、
この65万円控除がどうなるか疑問が生じました。
この取扱いについて、国税当局によると、
接続障害が生じたことによる期限延長を申請した上で、
e-Taxをすれば65万円控除を認めるとされていました。
このため、仮に本来の申告期限である3月15日に
間に合わなかったとしても、問題なく適用ができる、
と解釈できます。
しかしながら、法律的にはそう単純ではありません。
個別指定は、やむを得ない事情があって申告等が不可能な
場合に期限延長が認められるものです。
このため、e-Taxの不具合で電子申告はできないものの、
紙でプリントアウトして申告ができるのであれば、
やむを得ない事情があるとは言えないため、
個別指定は認められないことになります。
つまり、紙で申告できるのに、65万円控除という税制の
メリットを受けるために、わざわざe-Taxで
期限後に申告するとすれば、
個別指定による延長の対象にしてはいけません。
この点、e-Taxの不具合を想定した対象者指定なら、
e-Taxによる期限内申告ができないことを踏まえた
制度なので、原則として問題にはならないはずです。
こういう訳で、個別指定による期限延長により、
e-Taxの接続障害に対応しようとするのは、
法解釈上は無理があります。
申告期限の直前の不具合で、
対象者を指定するのは無理があると
国税当局は考えたのかもしれません。
しかし、自分たちの不手際を隠ぺいする際には
このような迅速な対応ができるのが国税組織です。
同様に、2021年末の電子取引のデータ保存の
義務化の延長が思い出されます。
国税は改正の法令が2021年12月28日に出て、
すぐに通達を公開しました。
このようなウルトラCができたのは、
電子取引のデータ保存の義務化は国税庁の親玉である財務省主税局が、
空気を読まずに作った悪法で、不手際以外の何物でもなかったため、
一秒も早く隠ぺいしなければならないと頑張ったからです。