貸倒引当金の計算方法の変更が与える地銀への影響
おはようございます。
金曜日を担当していますセブンセンスグルー
プ(SSG)公認会計士の高橋です。
金曜担当の私からは、会計、経営、財務、税
務、監査、内部統制関連の基礎・Tips・ニ
ュース等をお伝えします。
第185回の今回は、「地方銀行を悩ます引当
金ルールの変更」についてご紹介します。
今週、以下のような記事がありました。
<債券含み損だけじゃない 地銀を悩ます引当金ルール>
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB171Q80X11C23A1000000/?type=my#AwAUAgAAMTIyNDk5
2023年11月20日 日経電子版
引用、要約すると・・・、
・ 日本銀行の金融政策修正による金利上昇
は、地方銀行(地銀)の国内債券における含
み損を膨らませ、一部は損失処理に踏み切っ
た状況
・ 企業会計基準委員会(ASBJ)では、国際
会計基準(IFRS)に近い貸倒引当金計算ルー
ルへの変更を議論しており、地銀に大きな影
響を与える可能性がある
・ 現行の日本のルールでは、融資先の返済
能力に応じて引当金を計上しているが、IFRS
では信用リスクの変化に基づいて引当金を計
算するという点で異なる
・ このルール変更は、リーマン・ショック
の教訓から国際的に導入されたもので、将来
の予測を反映する形の引き当てルール
・ 地銀にとっては、IFRSに準拠した引当金
計算ルール導入により、人材やシステム投資
の必要性が高まるという懸念がある
というもの。
企業会計上の貸倒引当金について、IFRSへの
移行は地銀にとって大きな影響があるという記事。
現在の日本の企業会計ルールでは、貸倒れの可
能性が低い「正常先」に対しては、過去の実績に
基づく引当金を計上しています。
これに対し、IFRSでは貸付債権の信用リスク
の変動を重視し、リスクが増大した場合には
満期までの損失を予測して引き当てる必要が
あります。
この変更は、地銀にとっては融資ポートフォ
リオのリスク評価をより精密に行うことを求
めることになり、経営戦略やリスク管理体制
の見直しを迫られることになります。
また、この変更は、地銀が将来にわたる経済
予測やマクロ経済情報を用いて複雑な計算を
行う必要が生じるため、専門的な人材確保や
システム投資が必要となる可能性があります。
ただし、この変更は、地銀にとってリスク管
理の質を向上させ、より健全な融資ポートフ
ォリオを構築する機会を提供します。
さらに、国際基準に準拠することで、グロー
バルな資金市場における信頼性の向上にも寄
与することになるでしょう。
今回は「地方銀行を悩ます引当金ルールの変
更」についてお伝えしました。
引当金計算ルールの変更は、短期的には負担
となる可能性が高いですが、中長期的にはリ
スク管理の質の向上や国際市場での信頼性向
上につながる重要なステップとなります。
そのため、今後のASBJの議論を注視する必要
があると言えます。
それでは、今日はこの辺で。
良い週末をお過ごしください。