連続提出の意義
おはようございます!
税理士の松嶋と申します。
本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。
私のパートは【毎週木曜日】です。
税務調査について分かりやすく
解説していきます。
それでは、第四百回目。
テーマは、
「連続提出の意義」
です。
法人税の重要な節税の一つに、過去の
赤字(欠損金)を将来の黒字(所得)と相殺できる
欠損金の繰越控除があります。
この制度を適用する場合、外してはいけない
要件の一つに「連続提出」があります。
連続提出とは将来の所得と相殺するために
繰り越す欠損金について、それが発生した
年度から実際に相殺する年度まで、各事業年度の
申告書を毎期連続して提出することを意味します。
このため、例えば令和1年度で出た欠損金が
あった場合、その次の令和2年度の申告がない
まま、令和3年度の申告をするようなケースは、
連続して申告書を出していないので、令和
3年度の所得に対し、欠損金の繰越控除が
使えないことになります。
この要件ですが、税理士の実務上、期限内に
申告ができなかった無申告の法人について、
数年分まとめて一度に申告することがあります
が、このような場合に往々にして問題になります。
ただし、この連続提出について、よく誤解する
ことの一つに、連続提出と言いながら、順序立て
て提出する必要はない、ということがあります。
具体例として、平成30年度に欠損金が発生した
後、令和1年度は申告せずに、令和2年度を
申告した場合の令和3年度の取扱いについて
考えてみます。令和2年度の申告のタイミング
では、令和1年度の申告をしていませんので、
令和2年度の所得に対して、平成30年度の
欠損金を使うことはできません。
ここまでは前述した通りですが、仮に令和
2年度の申告後、令和3年度の申告前までに
令和1年度の申告をすれば、平成30年度から
令和2年度まですべての申告をしていますので、
令和3年度の所得に対して平成30年度の
欠損金を使うことができます。
まとめますと、連続提出とは、欠損金の
繰越控除を使おうとする年度の申告までに、
欠損金が生じた年度以後の全ての年度の
申告があることを意味し、順序だてて申告をする
(先の例でいえば、平成30年度、令和元年度、
令和2年度の順に申告をする)必要はないと
されています。
この点、国税の内規において、誤りが多い事例
として注意喚起されています。困ったことに、
過去の裁決事例で、連続提出とは順序だてて
申告する必要があると誤解させるような判断が
示されており、きちんと裁決や判例を勉強する
税理士も誤った理解をしてしまう可能性もあります。
事実、聞いたところによると、最近の事例
として、税務署もこの裁決を前提に取扱いを
間違えそうになったことがあるようで、
注意が必要です。
とりわけ、この取扱いは法人税の欠損金の繰越
控除に限った話ではないことにも注意が必要です。
個人が行う、株式の譲渡損の申告や先物取引に
係る損失の申告についても、過去の損失を当期の
所得と相殺できる繰越控除の制度が設けられて
います。この個人の所得税の損失の繰越控除に
おいても、「連続提出」という要件が設けられて
おり、この要件の解釈は法人税の取扱いと
同様と考えられますので、正確に理解する必要が
あります。