Column/コラム

インボイスと売手負担の振込手数料

インボイスと売手負担の振込手数料

インボイスと売手負担の振込手数料

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第三百九十三回目。

テーマは、

「インボイスと売手負担の振込手数料」

です。

負担軽減措置が令和5年度改正で設けられる
など、ゴタゴタがあったインボイス制度ですが、
いよいよ2023年10月より制度がスタート
することになります。

インボイス制度は非常に煩雑な制度なので反論も
大きいのですが、その中でも最も大きな問題が
生じると言われていた取引の一つに、売手が
負担する振込手数料の問題があります。

売手負担の振込手数料が問題になるのは、
この手数料については売手の経費とすべき
であるのに、買手が振込を行いますので買手宛に
振込手数料の領収書が発行されるからです。

インボイス制度は簡単に言えば、宛名が自己と
なっている請求書などの証拠を保存しなければ、
消費税の経費として認めない、とする制度
ですから、買手ではなく売手名義の領収書を
売手が保存する必要があります。

このため、振込手数料が売手負担の場合、買手は
原則として「売手に代わって振込手数料を
立て替えた」という立替金精算書を作り、それと
共に買手名義の領収書を売手に渡す、といった
処理(立替金処理)が必要になります。

しかし、このような処理は煩雑ということで、
値引き処理も認められると解説されています。
この処理は、売手が負担する振込手数料について、
買手に対する値下げとして処理する方法です。

値下げであれば、立替金精算書や振込手数料の
領収書は不要です。しかし、値下げしたとなると、
値下げを示す請求書(返還インボイス)を今度は
売手が買手に交付しなければなりません。これも
面倒なので、何とかならないかと指摘されていました。

このような批判を受け、令和5年度改正では、
値下げ金額が1万円未満の場合、売手は
返還インボイスの交付が不要とされました。

売手負担の振込手数料は原則1万未満ですから、
買手も売手も何ら書類を交付する必要がなく、
簡単な値引き処理ができると言われています。
しかし、必ずしもそうではありません。
消費税には非課税取引があるからです。

土地の譲渡代金などは、消費税が非課税です。
非課税の売上を値引きしても、そもそも消費税が
課税されませんので、納めるべき消費税は
減りません。先の値引き処理は、消費税が
課税される売上(課税売上)の場合に認められる
処理です。なぜなら、振込手数料には消費税が
課税されるからです。

このため、課税売上から振込手数料を引いても、
それを値引きとしても税額は変わりません。
しかし、非課税の売上については消費税が
ありませんので、値引きとすると振込手数料の
消費税を控除できず損をしてしまいます。

こういう訳で、非課税取引を行う事業者は、
振込手数料を売手負担とした場合には
値引き処理ができないと考えられます。

このため、非課税売上が多い事業者は、
立替金処理などの煩雑な処理が必要になる訳で、
インボイスはやはり負担が大きな制度と言えます。