Column/コラム

コロナ禍の税務調査はお互いに不幸になる

コロナ禍の税務調査はお互いに不幸になる

コロナ禍の税務調査はお互いに不幸になる

おはようございます!
税理士の松嶋と申します。

本メルマガは、皆様が怖い怖い
とおっしゃる税務調査に対し、
勇気をもって戦えるノウハウを
解説しております。

私のパートは【毎週木曜日】です。

税務調査について分かりやすく
解説していきます。

それでは、第三百八十四回目。

テーマは、

「コロナ禍の税務調査はお互いに不幸になる」

です。

またも感染者が増えるなど、落ち着く気配の
見えないコロナ禍ですが、コロナ禍が完全に
落ち着くまで、国税は全件税務調査を
ストップするべきと考えています。

感染状況に配慮しつつ、納税者の負担に
ならない範囲で承諾を得て税務調査をする

といったコロナ禍における税務調査の方針が
国税庁から出されていますが、こんな方針では
納税者はもちろん、国税調査官も不幸になります。

コロナ禍の際、とある税務調査に
立ち会った経験を思い出します。

いつものように、ろくに会社の話も聞かず、
資料を見るだけの甘い税務調査だったのですが、
3日間の予定なのに、調査官は2日目の
中盤あたりで税務調査をストップするというのです。

この理由を聞くと、その調査官の所属税務署の
職員の家族がコロナに感染したようで、
その職員は濃厚接触者に当たることから、
国税庁の方針で進行中の税務調査は全件
ストップし、直ちに税務署に帰署しなければ
ならないことになっているということでした。

その調査官の口調を踏まえると、税務調査を
ストップするので納税者にとっては都合が
いいだろう、位の感覚だったのでしょうが、
中止されると困るのは納税者です。

税務調査のための準備を数か月前から
行っていますし、貴重な仕事の時間を差し引いて
税務調査に立ち会っている訳ですから、
中止などとんでもない、と会社は怒りました。

加えて、濃厚接触者が税務署にいるにせよ、
調査官はコロナではないため、このまま
税務調査を継続するか、税務調査を
中止するのではなく終了させるかの
どちらかにすべきだ、と主張しました。

最終的には、1.5日間という短い時間で
十分な検討もしていないのに、調査官は
「会社の処理は基本的に問題ないので
 税務調査を終了します。」と言って税務調査を終えました。

税務調査を終了してもらうのはありがたい話
ですが、適正公平な課税の実現のための
税務調査がこのような形で十分に
実施できなくなるのであれば、
税務行政としては大きな問題です。

とりわけ、今は一回税務調査をした年度
については、再度の税務調査をすることが
制限されます。

結果として、十分な税務調査ができないままに
終了するとすれば、適正に是正されるべき
不正が発見されないことになり、悪質な
脱税者が得をする可能性もあります。

このように、コロナ禍の税務調査は中断せざるを
得ないリスクがある訳で、結果として税務調査が
不十分にならざるを得ません。

となると、調査官にとっても不本意ですから、
コロナ禍が完全に終わるまでは税務調査を
全件取りやめ、落ち着いてから再開するべきでしょう。

もちろん、全件ストップなら、脱税行為が
見過ごされる可能性がありますので、国税の
時効についても延長するなど特例的な措置を
法律で設ける必要があります。

しかし、残念なことに、政治家に
直談判するなど、法改正をするための度胸も
行動力も根性にも国税にはありません。