運転資金は流動資産の総額をさす

本書は、資金繰りを中心とした企業のキャッシュマネジメントをテーマとしているため、多くの部分において運転資本の検討を行っています。そこで具体的な検討に入る前に、運転資本について整理しておきます。運転資本は、一般的に流動資産の総額を指します。また、流動資産のみを以って運転資本を捉える考え方の他に、実質的に既に使用されている営業債務を流動資産から除外し、運転資本として利用できる余剰額を以って捉える考え方もあります。これを正味運転資本と呼び、以下のように算定します。

流動資産-流動負債=正味運転資金

上記それぞれについて、前者を投入済み運転資本、後者を余剰運転資本と捉える事が可能です。但し、一般的に上記2つの考え方によって把握した金額は与信管理を行う場合にはあまり使用される事はありません。理由としては、流動資産や流動負債に含まれる一定の勘定科目は短期的なリスクから解放されているため、与信リスクの評価から外すべきとする考え方があるためです。

例えば、現金預金については回収不能などのリスクはありませんし、短期借入金についてはリファイナンスによって資金返済が実質的に先延ばしにできるケースが少なくなく、その場合には短期的な支払債務として認識すべきではありません。企業の営業活動において与信リスクを評価する際には、短期的に運転資本が枯渇するリスクを評価すべきであるため、上記のような短期的リスクがないものは運転資本の計算に含めるべきではありません。

運転資本の定義は、その利用目的によって変わりますが、短期的な与信リスクを評価する目的であれば、以下の様に捉える事ができます。

売掛債権+棚卸資産-買掛債務=必要運転資本

運転資金を算出してみよう

本来必要な運転資本については、必要運転資本の額にその他の流動資産や流動負債を合算しなければ算定できません。しかし、実務上は与信管理の意味合いで使用される事が多く、また運転資本として把握すべき金額が一般的に正味の必要運転資本である事から、上記計算式にて算定した必要運転資本を運転資本として捉える事ができます。

なお、実際の資金繰りは、以下の理由により、収支計算にズレが生じる事があります。

1収支金額の季節的変動
2収支のタイミングのミスマッチ
3大口収支のズレそこで、必要運転資本を算定するに当たっては、上記算式によって算定した運転資本から、正味運転資本を差し引く事になります。

ポイント

運転資金とは、生産・販売を行う上での投下資本額です。運転資金をその企業がどのように算定しているかを把握する事で、企業実態を捉える事ができます。