資金繰りと取引先

企業では、キャッシュによってさまざまな営業活動を展開しており、この資金循環の停止や資金の枯渇が生じた場合、企業は営業活動の継続が著しく困難になります。この場合、当該企業の製品・サービスが優良であり、また企業としての成長が期待されていても、銀行取引や手形交換所での取引は停止され、取引先企業の与信も失い、営業活動全般が継続困難となります。

ここで、こうした資金繰り不良に陥る原因としては、取引先からの入金遅延など、突発的な資金繰りの悪化が挙げられます。こうした資金繰りの突発的な悪化を防止する観点から、企業においては取引先企業の与信管理を十分に行い、自社の資金繰りにおいて問題が生じないように配慮する必要があります。また、金融機関においては、取引先企業の資金繰りはダイレクトに業績に響くため、取引先の状態については十分に注意する必要があります。特に以下のような企業については、注意が必要です。

1、支払資金が不足し、緊急に単名借入れの要請があった

2、閉店間際まで決済資金の入金待ちが度々発生するこういう企業は、金融機関によっては要警戒先、要注意先となり、その資金繰りを常に注意する必要があります。また融資についても他の取引先と区別し、原則新しい融資は抑制すると共に、回収保全の強化を図る事になります。

資金繰りの優良な企業の特徴

一方、資金繰りにゆとりのある企業は、当座預金等につねに支払準備資金が潤沢に用意されており、季節的またはスポットでの一時的に手許流動性不足で資金が不足するような場合でも、以下の特徴を有する企業といえます。

与信評価の高い手形を多く保有し、割引手形とすることによって資金を調達する2割引手形は、振出日後1、2ヵ月経過したもので、手形繰りに余裕がある3他企業に比べ、月中での手形の取立入金の金額が大きい

資金繰りの特徴

資金繰りの特徴としては、資金収支に関する過去の実績を把握し、この過去情報に基づいて将来の一定期間における収入と支出を予測できる事、当該予測の中で収支のバランスをとり、不足資金の調達や余剰資金の運用を図れる事が挙げられます。これらの特徴を生かし、企業経営においては以下のような状況が発生する事は回避する必要があります。

1、手形期日における決済資金の不足で、不渡手形を発生させる事

2、従業員給料の遅延、仕入先等に対し支払いが滞る事

3、金融機関に対する返済約定の遅延そこで、企業はまず支払いを確定し、手許流動性と回収予定金をベースに現金収入でバランスを把握し、不足資金について外部調達を含めて検討する事となります。

資金繰表の機能

企業の資金管理のツールとして資金繰表が利用されます。資金繰表を用いて、比較的短期間の資金の動きを管理コントロールする一方で、期中を対象とした短期資金計画や、3年から5年を対象とした中長期資金計画を作成する事が出来ます。企業では、単年での資金調達・運用の状況は資金運用表で把握し、フローを含めた現金収支については資金移動表等で把握しています。

また、金融機関では、設備資金など長期融資においてはその返済可能性を確かめるため、長期資金計画書などの提供を依頼するほか、独自に作成する事もあります。企業ごとに管理する資料名称は異なりますが、同じ内容で資料が作成され、資金管理が行われています。本書では、こういった資料を中心に、資金の余裕や逼迫の原因やその背景にある要因を捉えると共に、逼迫改善のためのアドバイス、最終的には与信判断のポイントについても検討していきます。

また金融機関の場合、資金使途分析と併せて上述の圧迫要因等を見ていくことが、より正確な実態分析につながるものと思われますので、資金使途分析についても本件について簡単に触れていくようにします。

財務の安全性-資金繰りの問題点

資金繰りあるいは財務安全性といったものについて少し角度をかえて、財務分析全体の中で考えてみましょう。

財務分析において検討の中心となるのは、一般に、「収益性」と「安全性」です。そのうち「財務の安全性」は、もう少し細分化してみると、「財務健全性」と「当面の支払能力」に分解できます。財務健全性の分析の最終目的は、支払原資の獲得能力を支える財務基盤の健全性、すなわち、長期的な資金繰り基盤の安定性であることから、当該内容の検討は資金繰りの検討に結びついています。

収益性は財務基盤の安定性をサポート

「収益性」は、端的にいうと利益の獲得能力となりますが、これは最終的にキャッシュ・フローとして企業の長期的支払能力、財務基盤の安定化に寄与する点で重要性が高いといえます。

1、設備資金など長期融資に対する返済能力は十分である

2、長期安定的な利益獲得により財務基盤が年々増加する以上のように、利益獲得能力は長期的安定性をサポートするため、これが高い企業については安心して取引を続けていくための1つの判断基準となるわけです。

ポイント

企業は利益を上げることが最終目的ではなく、利益がキャッシュ・インにつながらないと意味がありません。利益と資金の関係をまず理解した上で、財務分析で捉えたものが実際の資金繰りに反映しているか、資金繰りの実態観察の中で検証することが必要です。どちらを欠いても十分に企業の資金状況を捉えることはできません。収益好調でも決済資金が不足すれば、倒産することになります。