資金繰表の機能

資金繰表は企業の現金収支の状況を明らかにすると同時に、資金不足の要因、不足額、不足の時期を把握することが可能となります。したがって金融機関に借入申込みがあった場合には、金融機関担当者は必ず資金繰表を要求し、借入申込み内容と整合性がとれているかどうかの確認を行います。資金繰表の機能には、以下のようなものがあります。

1 資金収支状況を表す。
2 期間損益の計算が可能となる。
3 主要勘定科目の月別残高が把握可能となる。
4 勘定科目残高より科目ごとの回転期間が算出可能となる。

以上の機能を活用することにより、企業の経営実態を適切に把握することが可能となります。

しかし、提出された資金繰表をそのまま鵜呑みにしてしまい、必要な分析や検討を加えなかった場合には、上記の1~4の実態や変化を見逃すことになり、適切に分析が行われないことがあります。

資金繰表分析不足による分析失敗事例1

実態の無い運転資金の増加
(赤字発生→資金不足→倒産→ロス発生)

〈分析方法〉期間損益の算定で把握する赤字の発生赤字資金や滞貨融資等のいわゆる後ろ向き資金は、他の資金使途の名を借りて資金申込みがなされるケースがほとんどです。売上が増加基調で提出された資金繰表において、計算上増加運転資金の発生が確認された場合であったとしても、人件費の高騰や仕入原価の高騰で採算が悪化している場合があります。また、売上は低迷しているのにもかかわらず、売上増加を見せかけた資金繰表を提出して申込みをする場合もあります。

前者の場合では、提出された資金繰表の期間損益状況を確認することにより赤字発生が確認可能です。後者の場合には、資金繰分析のみでは赤字発生の確認が困難ですが、過去の売上増加の推移や市場環境等から売上増加の実現性を確認することにより資金使途の妥当性を判断し、回避することは可能です。また、買入債務対棚卸資産比率の推移や月平均仕入高による棚卸資産回転期間の推移から粉飾決算を見破ることも可能です。赤字資金が発生している企業に対しての融資対応は、通常時とは相違してきます。申込みを断るという対応も可能ですし、受け入れるとしても保全強化を条件とする必要があるでしょう。

資金繰表分析不足による分析失敗事例2

売上債権回転期間の長期化の見落とし
(回収不能債権→融手等の発生→破綻→ロス)

〈分析方法〉主要勘定科目の回転期間の算出主要勘定科目の回転期間は、決算書・試算表・資金繰表から算出できますが、予想資金繰表を使用するとさらに早く確認することが可能です。資金繰表は、数ヵ月先の主要勘定科目の残高が推定できるため、これに基づく回転期間が算出できるからです。資金繰表における主要勘定科目の残高の算出方法は上述した通りですので、これに基づき算出し、回転期間の変化の状況を把握します。回転期間の変化に異常性がある場合には、回収不能な不良債権の発生や融通手形の発生が懸念されますので、詳しく分析していくことが重要となります。

資金繰表分析不足による分析失敗事例3

棚卸資産回転期間の長期化の見落とし
(デッドストック、架空在庫(粉飾決算)の発生→破綻)

〈分析方法〉回転期間に注意棚卸資産が増加することは、それだけ資金が固定化することになるため、企業の資金繰りは悪化につながります。企業が資金の効率化を考えるならば、常に、適正在庫を保つ必要があり、適正在庫を保っている限り棚卸資産の回転期間は大きくは変化しません。企業の適正在庫回転期間を逸脱するような回転期間の変化が生じた場合には、不良在庫等の発生が予想され、最悪のケースでは倒産に至る場合があります。資金繰表の分析を適切に実施することにより、いち早くこれらを察知し、そのような事態を免れる必要があります。

資金繰表分析不足による分析失敗事例4

買入債務回転期間の長期化の見落とし
(資金繰りの悪化の表れ・融手の発生→破綻→ロス)

〈分析方法〉支払いの延期に注意買入債務の長期化は、資金の支払いが繰延べされるため企業の資金繰りは改善されますが、この背景には、資金繰りが逼迫してきたためにやむをえず支払いを延ばしていることも想定されます。この買入債務の長期化の背景・理由を分析することにより不適切な融資を防止することにつながります。

資金繰表分析不足による分析失敗事例5

買入債務回転期間の短縮化の見落とし
(対外的信用力の低下→仕入難→破綻→ロス)

〈分析方法〉対外的信用の低下に注意買入債務回転期間の短縮は、支払いが早まっていることを意味します。支払いを早める場合には、支払条件を早期化する代わりに安く仕入れて採算性を高めている場合と、逆に対外的信用力の低下から支払条件の改善を迫られている場合とが想定されますので、短縮化の理由を分析する必要があります。

以上、赤字の発生・回転期間の変化は資金繰表の分析により把握することが可能ですので、入手した貴重な資料を有効活用することが重要となります。

ポイント

資金繰表は、企業の最新の経営実態の情報を示す資料ですから、金融機関担当者は必ず提出を求めるものとなります。資金繰表の回転期間分析により赤字や架空在庫が判明します。具体例は後述を参照してください。